こんにちは、竹岡佳信です。
私は52歳の時に、30年間、勤務した会社を卒業しました。
早期退職プログラムを使っての卒サラだったので、最初の1年間は、転職というか、再就職の斡旋プログラムを利用することが、義務付けられていました。再就職そのものに、あまり期待はしていなかったのですが、50代の転職、再就職の状況は、想像以上に厳しいものでした。
簡単に言うと、50代の求人に求められている労働って、実は、単純事務作業ぐらいのもので、高い給与を支払ってでも雇いたい、と考える経営者は、ほとんどいない、と言うのが実態です。
だって、よくよく考えてみてください。今、いる会社の中で、役職についていない50代の方って、どういう扱いを受けていますか?
確かに、業務の経験はあるので、仕事を任せられる部分は、もちろんあります。でも、新しい仕事を割り振るのなら、今後も、ずっと担当してもらえそうな30代か40代前半の人に仕事を覚えさせたい、と考えるのが、経営からすれば、ごく普通の発想ですよね。
それに、50代になると、だんだん器用にマルチタスクをこなす、と言うことが出来なくなってくるので、とりあえず、今やっている仕事を、そつなくこなしてもらえればいい、と言う扱いになってしまいます。業務経験を活かして、それなりに新人の指導なんかをお願いすることは出来ますが、20代と50代となると、世代間のギャップは、とても大きいので、仕事以外の基本的な部分でかなりの軋轢が生じます。時には、職場全体に影響が出るような摩擦を起こしかねません。なので、総じて言えば、50代イコール扱いにくい人材、になりつつある、と言うことなのだと思います。
そういう世代の人を、わざわざ雇おうとする経営者は、やはり少ないのが実態なんだと思います。まして、会社に囲われてきた人材が大量に放出されるような時代です。50代にとって条件の良い転職先が選びたい放題、なんていうことは、絶対にないと認識した方が良いのかもしれません。
そんな前提を踏まえつつ、50代からの転職は絶対にやめるべき5つの理由について、順番にお話ししていきますね。
理由1:雇用条件が悪い
一つ目の理由は、想定以上に雇用条件が悪い。簡単に言えば給与水準は前職の3分の1程度を覚悟したほうが良いと言うことです。
給料が3分の1になったから、働く時間や負荷が3分の1になるかというと、そんなことがあるはずもありません。当然、朝から晩まで、決められた就業時間中はきっちりと働かなければいけないし、指示された作業が出来ていなければ、当然に残業だってあるかもしれません。しかも、慣れない仕事だから残業をせざるを得ない、と言う状況であれば、胸を張って残業代を請求できるはずもありません。ついつい、サービス残業が常態化するのではないでしょうか?
では、なぜ、そんな条件の求人しかないのか?それは、もしあなたが上司になるとして、やはり年上の方って「使いにくい」と感じるのではありませんか?年功序列が崩壊したと言っても、やはり年上は敬うべし、と言う教えは根強く残っているし、逆に年下の人からタメ口で何か言われたら、その人が年下だというだけで、何となく腹立たしい気分になる方の方が、多いのではないでしょうか?つまり、組織の中で、部下としては使いにくいのが50代です。だから、部長職とか役員以上の役職を求人しているといった、一般に出てきにくいケースでもない限り、50代の求人そのものが非常に少ないということを理解する必要があります。
もし、自分がリストラされたら、別の会社に転職をすればいい、という考えを抱いているとしたら、それは、間違いなく家族を路頭に迷わせる第一歩かもしれないと思ってください。50代からの転職は、雇用条件が悪い上に、求人数そのものが非常に少ないのが実態です。
理由2:新しい環境への適応が難しい
二つ目の理由は、新しい環境への適応が難しいと言うこと。
年齢を重ねると、新しい環境に順応する能力が、だんだんと落ちていきます。今までとお同じ環境であれば、ある程度、新しいことにも対応できるのですが、職場も、人間関係も、上司との信頼関係もいまひとつという状況の中で、誰かの指示、これは大抵は年下の上司になるはずなんですが、その指示に従って、間違いないように業務をやっていく、ってこと自体が、かなりのストレスになるはずです。
もし、あなたが狭き門を通り抜けて、新しい職にありつけたとしても、その職場に馴染んで、やっていけるかどうか、というハードルが、その先にはある、ということです。大企業では、会社に籍を残したまま、出向という形で新しい職場を試させてくれるという、ありがたい制度が残っていたりする会社もあります。でも、新しい職場に馴染めずに戻ってきたり、逆に、出向先から「使えないから」という理由で戻されるケースも多々あると聞いています。50代からの転職では、新しい環境に馴染めない場合が多い、ということも頭に入れておいてください。
理由3:体力・気力が衰えている
三つ目の理由は、体力、気力が想像以上に低下していると言うこと。
私自身の経験から言うと、55歳を過ぎたあたりで一回目のパワーダウンを感じました。今までなら何でもないことが、妙に体にくるというか、疲れやすくなったりします。それでも、この段階は、まだ気力で頑張れるのですが、57歳ぐらいで二回目のパワーダウンがあります。これは結構キツくて、気力が萎える、という感じになりがちなんです。何となく体調が悪いとか、何となく頑張れないとか、いつもと同じことをしているはずなのに、やたらと疲れるとか、その結果、何だか「やる気」まで削がれていく、と言う感覚です。
そんな状況の中で、自分のことを、よく知ってくれている人もいない環境で、果たして、上手くやっていけると思いますか?結局、転職してみたけれど続かなくて辞めてしまったという事例は、よく聞く話です。慣れ親しんだ職場なら、それなりにゴマカシもきくでしょう。でも、新しい職場であれば、誰かにちょっとお願いすることも、仕事を適当にごまかすなんてことも出来ません。そうでなくてもパワーダウンしている自分が、新しい環境ででも「働くこと」への意欲をどれほど持ち続けられるのか?自分自身としっかりと向き合う必要が、あるのかもしれません。
理由4:雇われる人生のリスク
四つ目の理由は、人生100年時代と言われて、まだまだ長生きしそうならば、いつまでも雇われる人生にしがみつくことは、リスクを増大させるだけだと言うこと。なぜなら、転職先にも定年がある、ということです。
これまで、50代からの転職が難しい理由を3つ述べてきました。3つ全部が当てはまる、とは言わないまでも、どれか1つでも当てはまると思ったのなら、転職に自分の人生をゆだねることは、かなりリスキーな選択になりかねません。20代前半まで勉強して、そこから定年まで働いて、定年後は、働いてきた蓄えで生きるという3ステップの人生設計は、既に、機能しなくなりつつあります。だって、今からどんなに頑張ったとしても、定年後の生活を支える、いわゆる老後資金が足りないことは、明らかだからです。
あなたは、老後の生活の収支について、真剣に考えたことはありますか?年金と蓄えだけで、何とかやっていけるはずだ、と思い込もうとするだけで、実際の収支をシミュレーションしたことはない、のではありませんか?割増退職金をもらったとしても、ほんのちょっとした気の緩みで、そんなものは、あっという間にどこかへ消えていきます。私自身、1年もたたないうちに、割増退職金を上回る支出になってしまいました。銀行残高が7桁を超えていると、何だかお金持ちになったような気分になって、ついつい財布の紐も緩んだりします。何十年も働いてきたご褒美を自分にもあげないとな、なんて思ってしまうんですよね。最初のうちは、まだ大丈夫、なんて思っているのですが、みるみるうちに減っていく銀行口座の数字を見ていると、口座をチェックすること自体が、本当に嫌な作業になってしまって、最後には残高を確認しなくなってしまいました。
割増退職金は、決して、余剰資金などではありません。次の収入源を作るまでの期間の、生活資金なんです。ですので、絶対に株式投資や、ましてFXなど、資金そのものをリスクに晒すようなことは絶対に避けるようにしてください。
退職金も年金も、それだけでは死ぬまで食っていけないとしたら、どうすればいいのか?それは、まだ体力にも気力にも余裕があるうちに、持続可能な収入源を作っておく必要があるということです。自分の知識、経験を活かして、小さくてもいいから、一人で回せるビジネスを育てることにチャレンジしてみてはどうでしょうか?
ビジネスというと、何だか大袈裟で、少なくとも数百万円の資本を投下したり、会社を登記してオフィスを構えて、人を雇わなければならない、というイメージをする方もいらっしゃるかと思います。でも、実際にそんなことをしたら、数ヶ月も持ちません。自分でビジネスをしたことがないのに、資本が必要なビジネスを始めるなんて、自殺行為そのものだからです。そうではなくて、まずは、自分がこれまでにやってきたこと、知識や経験をコンテンツにして、誰かに伝えてみる。大袈裟に言えば、教えてみる、という、本当に小さなところからでも、ビジネスは初めることができます。後輩を指導するとき、簡単な資料とかを作ったことはありませんか?なかなか覚えないやつに、手取り足取り、いろんな角度から業務を教えた経験が、あるのではないですか?あれと同じことを、やってみてはどうでしょうか?
インターネットが当たり前になったおかげで、広告を出す費用もかけずに、ビジネスをお試しと言えるようなレベルではじめることが可能になりました。私たちは、これをマイクロビジネスと呼んでいます。30年近く、会社に勤務していたら、その中で培った経験の中に、必ず、他の人の役に立つことがあるはずです。或いは、情熱を傾けてきた趣味や、個人的な探求の中に、必ず工夫してきたものがあるはずです。それが、ビジネスの種になります。それを、簡単な解説動画にして、Youtubeとかにアップしてみてください。顔出しも不要。スライド数枚で音声を入れればいいだけです。そうすると、少なくとも、何人かの人に、必ず見てもらえるはずです。つまり、見知らぬ人に、自分が役に立つものを持っているということを、知らしめることができるということです。そんな解説動画のネタなんかない、と言う方は、実際にYoutubeを「流し見」してみてください。あらゆるテーマの動画が、そこにはあると思います。
サラリーマン経験からなら「上司に嫌われない残業の断り方」とか「打ち合わせに遅刻しても絶対に許してもらえる言い訳10選」とか、でも構いません。多分、もっと専門的なこともテーマにできるはず。そして、この解説動画を意図的に広げていければ、月に数万円の売上を得ることは、さほど難しいことではありません。動画教材であればUdemyなどのマーケットプレイスもありますから、ダメ元で動画教材を作って出品してみるのも良いと思います。動画の品質チェックも、無料でやってくれたりします。そして、そういった、マイペースで出来る小さなチャレンジこそが、マイクロビジネスを始めるということに繋がっています。
数万円が達成できたら、別のことで、また数万円の収入を作る。或いは、数万円を原資にして、数十万円を狙えるように、そのビジネスを育てていく、ということも可能です。
思うような結果が得られにくいことが、わかっている転職活動に、貴重な時間を費やすよりも、最初のマイクロビジネスを始めるために、時間を投資する方が、これからの長い人生を考えた時、よほど大きなリターンを期待できるかもしれません。
理由5:嫌なことを続けても幸せにはなれない
五つ目の理由は、我慢して、食っていくためだけに、嫌なことをするぐらいなら、たとえ収入が下がったとしても、自分の好きなことを追求していく方が、人生全体としてはよほど幸せになれると言うこと。
会社の仕事が好きで好きで仕方がなかった、という方を別にすれば、まぁ、そんな方は、あまりいらっしゃらないかとは思いますが、仕事というものは、何らかの我慢をしてやるものだ、という認識が一般的ではないでしょうか?給料は、その我慢料だし、家庭に持ち込めない、会社で溜め込んだストレスを解消する赤提灯は、サラリーマン生活に必須だったという方も多いのではないかと思います。では、そんな生活を、これから何年も続けてきたいと本気で思いますか?会社の健康診断では、いかに自分が不健康かを同僚と自慢しあったりしませんでしたか?それは、体を壊すほど働いているんだ、という自己アピールの一つになっていたのかもしれません。でも、体を壊すということは、寿命を縮めるということ。命を削るということです。果たして、50代になっても、自分の命を削るほどの価値が、会社の仕事にあるのでしょうか?
食っていくのにやっとというレベルの収入のために、朝から晩まで我慢を重ねて、嫌なことをするぐらいなら、収入レベルを多少落としてでも、自分の好きなことや、得意なことで、クライアントからお礼を言われるようなマイクロビジネスを始めた方が、人生はよほど穏やかだし、幸せを感じられるのではないでしょうか?
起業しても失敗するに違いない、と言うのは、大抵は、一度も起業したことのない人の言葉です。ビジネスとは、お客さんが欲しいものを、お客さんが欲しいタイミングで、目の前にそっと差し出すだけで十分に成立します。売り込みなんて逆効果でしかないからです。私たちは、年に1億円稼ぐ必要があるわけではありません。数百万から、せいぜい1000万円程度あれば、十分ですよね。そして、真面目にビジネスに取り組んでいる方であれば、年に1000万円を稼ぐことは、それほど高いハードルではありません。事実、私は2013年に今のビジネスを始めたのですが、1度も1000万円を切ったことはありません。
大切なことは、成果が出るまで行動を継続すること。そして、そのためには、自分が無理なく続けていけるテーマを選ぶことです。嫌なことなんか続かない、苦手なことなんか続くはずがない。だからこそ、好きなことや、得意なことを組み合わせることで、自分のビジネスを始める。それが、一番、ストレスなく、継続的に収入を得られるマイクロビジネスを始めるための秘訣です。
さて、ここまで50代からの転職は絶対にやめるべき5つの理由をお伝えしてきました。
もしかすると、自発的に転職を考えているのではなく、リストラや仕事消滅によって、やむなく転職活動を始めなければならないと言う方も、いらっしゃるかと思います。でも、それは、ある意味、何となく続けてきた会社人生をリセットするチャンスでもあります。これまでの会社優先の生き方を変える、絶好の機会なんです。
人生100年とは言わないけど、80歳ぐらいまで生きるとしたら、死ぬまでに、まだ20年以上あります。そして、今の時代は、年金暮らしの老後、なんていう選択肢はなくなりつつあり、生涯現役で働き続けることが当たり前になる時代なのかもしれません。
だとしたら、会社に頼る生活を、早々に卒業する必要があります。自分で自分の人生のコントロールを取り戻すためにも、自分の知識、経験を活かし、好きなことや得意なことで、あなたのマイクロビジネスを始めるのも、一つの重要な選択肢になるかもしれません。